フランス滞在記(2024年3月)

西山雄二

高波力生哉

菊池一輝

佐藤勇輝

米原大起

江﨑拓真

西山雄二(人文科学研究科教授)

2024年3月初旬、東京都立大学のグローバル・コミュニケーション・キャンプ「フランスの大学における異文化交流と地域文化の比較研究」のプログラムにて、院生・学部生5名とフランスに滞在し、パリとレンヌにて大学や高校での授業見学と学生交流を実施した。


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これまで何度も、都立大のプログラムで学生らとフランス滞在をくり返してきた。ただ、その参加者は学部生、とくに2−3年生が主だったが、今回はほとんどが大学院生という構成となった。フランス文化に触れたいという初々しい若者とは異なり、すでに自分の専門研究を展開させている学生である。従来の旅とは少し異なる計画と目的となり、大学での演習授業見学など、より専門性の高いプログラムとなった。

飛行機チケットは高騰しており、直行便は高額だったので、中国国際航空(AirChina)を選んだ。北京乗り継ぎ便は12万程で、直行便の半値近い。中国国際航空は安いので、ネットの評判もそれなりで、遅延が多いという噂もある。しかし、実際は、普通のエコノミー便と同じサービスで、遅延もなく順調なフライトだった。
学生とフランス旅行をするのはこれで12回目ほどである。当初、若い頃は学生らと同じ小さなアパートに滞在した。年を取ってからは、自分はさすがに別のホテルに泊まっていた。今回は男性ばかりで院生ということもあり、久しぶりに、みんなで同じアパートを借りた。AirBNBで手配したパリとレンヌの宿(3LDK)3件はいずれも満足のいく住み心地だった。掃除が行き届いていて清潔で、十分な設備が整っていて、チェックイン/アウトも実にスムーズだった。



今回のプログラムの目的は以下の通りである。
・レンヌ第2大学で、日本語の授業に参加し、「東京都立大学の学生生活」「東京の観光」について発表をおこない、学生同士の交流をおこなう。
・同大学で「あわい」に関する比較文化的考察の研究発表セミナーを開催する。院生4名が発表をおこない、学生らと議論を交わす。発表テ−マは「お盆における生者と死者の交流」「蕎文化の日欧の比較」「新海誠作品における生死」「日本的な「いき」の概念」。
・パリ第8大学にて、デリダ研究会に参加。外国人留学生が多数参加する研究会で、フランスにおいて多様な国籍の若者がいかに協同研究をおこなっているのかを学ぶ。
・パリ西ナンテール大学にて、フランソワ=ダヴィッド・セバー(François-David Sebbah)先生の大学院授業に参加。「歓待」の概念をめぐる演習で、大学院生がいかなる仕方で学術的な議論を交わすのかを経験する。
・パリ近郊サン=クルーのデュマ高校で準備学級2年の文学(2クラス)と1年の哲学の授業を見学。文学の授業は「暴力の問題」に関する授業で、暴力と経済の関係をめぐって適切に問いを立てる思考法を学び、フランス独自の教育法を実感する。哲学の授業は「科学」に関する入門的説明で、個々の科学が独自の歴史性をもっていかに真理探究をおこなうのかを理解する。

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(レンヌ第二大学)

(デリダ研究会打ち上げ)

(日本人留学生との交流会)

今回の滞在も、フランスでの生活、留学、観光が混じり合った独特なプログラムで、濃密な日々だった。今回の参加は院生4名と学部生1名だったが、みなフランス滞在が初めての経験だった。この豊かな経験は今後、学生生活や研究活動にフィードバックされるだろう。

レンヌ第2大学では、高橋博美先生に全面的に支援していただき、準備がおこなわれた。留学中の本学学生・土屋るるさんにも通訳などで手伝っていただいた。デュマ高校では、エロイーズ・リエーブル先生が授業のコーディネートをしてくれた。パリに滞在している藤田尚志先生(九州産業大学)が当日、同行してくださり、適切にサポートしてくれた。パリ西ナンテール大学の授業見学については、フランソワ‐ダヴィッド・セバー先生に、パリ第8大学の見学については、Uzir Srijan先生に支援していただいた。パリでの文化視察では、ソルボンヌ大学院生の関大聡さんにサポートしていただいた。関係者のみなさんに感謝申し上げる次第である。