(演習科目の一部を紹介しています)
2021年度
前期・大学院ゼミ「デリダ」
フランスの哲学者ジャック・デリダ(1930-2004年)が提唱した「脱構築」の思想は、哲学のみならず、文学、政治、言語、倫理、教育、芸術、精神分析など多岐にわたる分野で影響を与えました。デリダは1991年から最後の2003年まで「責任の問い」という大主題のもとで一連のセミナーを実施しました。本演習では、デリダが晩年に論じた主題を著作と共にとりあげて考察していきます。
4/7 アカウンタビリティとレスポンシビリティ
アカウンタビリティ(説明責任)は会計学の伝統的概念ですが、1990年代から社会のさまざまな分野に適用され幅を効かせています。日本流の「自己責任」もその亜流でしょう。デリダやレヴィナスのレスポンシビリティ(責任=応答可能性)を浮き彫りにするために、両者の比較をおこないます。
4/14 『死を与える』第1章
4/21 『死を与える』第1-2章
4/28 マクロン大統領アメリカの報道番組での発言「私たち自身の歴史を脱構築しなければならない」に関するフランス語記事を読む
5/12 出版されたばかりの『時間を与えるII』の序文(フランス語)を読む
5/19 『死を与える』第2章
5/26 『死を与える』第3章
6/2 院生の研究発表 デリダ/ハイデガーにおける政治的なもの
6/9 院生の研究発表 デリダの赦し論
6/16 院生の研究発表 サルトル『出口なし』
6/23 院生の研究発表 シクスー『ドラの肖像』
6/30 院生の研究発表 ガッシェ「批評としての脱構築」(『脱構築の力』)
7/7 カトリーヌ・マラブー『抹消された快楽 クリトリスと思考』:日本語訳刊行間近の本著の第1章を、初校ゲラの校正版とともに解説します。マラブーにおける女性的なものの思考を概説し、実際の翻訳作業の現場(ゲラ校正)を体験してもらいます。
7/14 院生の研究発表 カント/ハイデガーの想像力論
7/21 院生の研究計画へのコメント
後期・演習「感情」
「ヤバい」「萌える」「アガル」といった直截的で感情的な表現がネット上では飛び交っています。知性的な分析や合理的な判断だけでなく、気分や情緒を吐露する表現は往々にして、私たちの社会において大きな役割を担っています。感情は合理的な基礎を欠いている、得体の知れない心的現象です。しかし、感情は自分がどんな状態にあるのかを教えてくれ、物事に対する価値判断をもたらし、共有されることで他人との交流を可能にします。本講義ではテクストの抜粋ととともにさまざまな感情を考察することで、私たちの社会における感情のありかを見定めます。
10/6 ガイダンス 清水真木『感情とは何か』
10/13 愛/恋愛/エロス/慈愛 プラトン『饗宴』
10/15 友情/兄弟愛/親近感/承認欲求 アリストテレス『ニコマコス倫理学』、デリダ『友愛のポリティックス』
10/27 嫉妬/軽蔑/シャーデンフロイデ(Schadenfreude) ロラン・バルト『恋愛のディスクール 断章』、山本圭「嫉妬が大好きなあなたたちへ」
11/10 悲しみ/切なさ/無念 小此木啓吾『対象喪失 悲しむということ』、マリ=フレデリック・バッケ/ミシェル・アヌス『喪の悲しみ』、竹内整一『日本人はなぜ「さようなら」と別れるのか』
11/24 恐怖/不可思議/怪異 戸田山和久『恐怖の哲学 ホラーで人間を読む』、平山夢明『恐怖の構造』
12/1 不安/苦悩/空虚感/安心 フロイト「不気味なもの」
12/8 怒り セネカ『怒りについて』、アグネス・カラード『怒りの哲学』、バーバラ・H・ローゼンワイン『怒りの人類史』
12/15 驚き/崇高 アリストテレスとデカルト、カント
1/12 感情×経済 感情労働 山田陽子『働く人のための感情資本論』、関谷大輝『あなたの仕事、感情労働ですよね?』。
1/19 感情×政治 メディアとポピュリズム カリン・ウォール=ヨルゲンセン『メディアと感情の政治学』、日比嘉高+津田大介『「ポスト真実」の時代』。
2020年度
前期・演習「疫病と人文知」
1960 年代以後、ヨーロッパの現代思想は、従来の哲学の枠組みにとどまることなく、文学、政治、芸術、経済、精神分析といったいくつもの領域を横断しながら展開されてきた。本講義では、そうした多様な現代思想を理解するために、各回で(主にフランスの)思想家を取り上げて、そのテクストをキーワード(主に政治、社会に関連するもの)ごとに読み解く。とりわけ、現在のコロナウイルスの世界的流行を考えるためのアクチュアルな議論を目指す。
5/13 ガイダンス
5/20 カミュ『ペスト』
5/27 『現代思想』2020年5月号「感染/パンデミック」を読む
6/3 ソニア・シャー「感染症の大流行に立ち向かう」、 ユヴァル・ノア・ハラリ「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか」
6/10 ソンタグ『隠喩としての病』
6/17 院生による発表 J-L・ナンシー『私に触れるな』
6/24 院生による発表 デリダ「歓待」
7/1 院生による発表 アルトー「演劇とペスト」
7/8 ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』
7/15 アーレント『人間の条件』第2章7-9(公的空間、私的領域)
7/22 まとめ
後期・大学院演習「想像力」
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「想像力imagination」は、ラテン語imago(像)に由来することからわかるように、過去に経験したイメージを再生する、あるいは、新しいイメージを創造する心的能力である。想像力の問題をめぐっては、哲学、芸術論、心理学などの分野でさまざまな議論が展開されてきた。本演習では、哲学者ジャン=ポール・サルトルとジャン=リュック・ナンシーの著作を読み解くことで、想像力やイメージの問題系を考察する。
初回:アンドレ・ラランド『哲学辞典』の項目「イメージ」(フランス語)を読む
10-11月 ジャン=ポール・サルトル『イマジネール』読解
11/18 ジャン=リュック・ナンシー&ジネット・ミショー「さまざまな形への欲望」(フランス語)の翻訳実践
11/25 ジャン=リュック・ナンシー&ジネット・ミショー「さまざまな形への欲望」(フランス語)の翻訳実践
12/2 院生の発表 ナンシー「禁じられた表象」
12/9 院生の発表 デリダ+ナンシー「正しく食べなければならない」
12/16 院生の発表 デリダ+ナンシー「正しく食べなければならない」
12/23 院生の発表 デリダ「赦すこと」
1/6 院生の発表 サルトル『自我の超越』
1/13 院生の発表 ナンシー「禁じられた表象」
1/20 院生の発表 ナンシー「禁じられた表象」